【第2回】理念を“きれいごと”と感じる社内文化

——理念が現場に響かないのはなぜか?——

経営者がどれだけ熱く理念を語っても、
現場では「きれいごと」「理想論」と受け止められてしまうことがあります。

実はこの“温度差”こそが、理念が浸透しない最大の壁です。
そして、その原因は「社員が冷めている」からではありません。
多くの場合、経営者側の伝え方に“ズレ”があるのです。


[「きれいごと」と感じるのは、現場とのギャップ]

理念がきれいごとに聞こえるのは、
現場がその理念を「自分ごと」として結びつけられていないからです。

たとえば——
社長は「お客様第一主義」を掲げているのに、
現場では「納期を守ることが最優先」「利益を確保することが評価される」。

このように、理念と現実の間に矛盾があると、
社員は「結局、言ってることとやってることが違う」と感じてしまいます。

理念を“語る”ことよりも、
日常の意思決定や行動に“体現”することが大切です。


[理念を「現実」とつなぐ言葉を持つ]

理念を伝えるときに多くの経営者が陥るのが、
“正論”で語ってしまうことです。

「お客様の笑顔のために」
「地域に貢献する会社でありたい」
——確かに正しい。でも、それだけでは現場は動きません。

社員が共感するのは、理念そのものよりも、
理念をどう現実に落とし込むかという「リアルな言葉」です。

「クレームをもらったときこそ、理念の真価が問われる」
「数字が厳しいときほど、理念に沿った判断をする」
そんな“現場語”で伝わる理念こそ、本当に浸透します。


[理念は「指示」ではなく「信念」]

理念は社員を縛るためのルールではありません。
行動を導く“信念”であり、判断の軸です。

上から押しつけられた言葉は浸透しません。
社員が「なるほど、だからこう判断するんだ」と感じた瞬間、
理念は心の中に根づき始めます。

経営者の役割は、
理念を“押し出す”ことではなく、
社員が“引き出したくなる言葉”に変えていくことです。


[理念を浸透させる最初の一歩]

もし現場が「きれいごと」と感じているなら、
まずは**経営者自身が理念を“行動で示す”**こと。

会議の判断、顧客対応、採用基準、経費の使い方——
その一つひとつに理念がにじんでいれば、
社員は「この会社、本気なんだ」と感じ始めます。

理念は“語るもの”ではなく、“生きるもの”。
経営者が日常で体現する姿が、何よりの浸透力になります。


📘次回予告

第3回:「理念を語る場がない」
——理念は、掲示ではなく「対話」から浸透する——