【第1回】理念が「社長の頭の中」にしか存在しない

——“伝えたつもり”が、最も危険——

多くの経営者はこう言います。
「うちには理念がある」
「社員もわかっているはずだ」

しかし、実際に社員に尋ねてみると、
「社長がよく言ってる言葉ですよね?」
「正直、内容までは覚えていません」
——そんな声が返ってくることも少なくありません。

理念は、つくっただけでは存在しないのです。
経営者の頭の中にあるうちは、まだ“想い”の段階。
現場で行動に変わってこそ、“理念”として機能します。


[理念を「共有」から「共感」へ]

理念は“伝える”だけではなく、“感じてもらう”ことが大切です。

朝礼や会議で唱和する企業もありますが、
ただ言葉を口にするだけでは社員の心には届きません。

大事なのは、
「自分の仕事のどこに理念が生きているのか?」
を一人ひとりが考えられるようにすること。

経営者が語る理念が、社員の口から語られるようになったとき、
それは“会社の理念”ではなく、“自分たちの理念”に変わります。


[理念は「経営者の脳」から「組織の血流」へ]

理念は、創業者の想いを可視化したもの。
けれど会社が成長し、社員が増えるほど、
その理念は社長の頭の中に閉じ込められ、
現場で薄まっていく傾向があります。

だからこそ必要なのが、理念の“翻訳”作業です。

経営者の想いを、現場の言葉に置き換え、
日々の判断や行動の中に落とし込む。

「この判断は理念に沿っているか?」
「この行動は理念を体現しているか?」
そう考えられる社員が増えるほど、会社は強くなります。


[理念浸透プログラムの第一歩]

理念を現場に落とし込む最初のステップは、
「社長の頭の中」を正確に言語化することです。

  • なぜこの会社をつくったのか?
  • 誰のためにこの仕事をしているのか?
  • なぜこの事業でなければならないのか?

この問いを改めて掘り下げることで、
経営者自身が“原点”を再確認し、
理念が現場へと伝わる力を取り戻します。


理念は掲げるものではなく、共に生きるものです。

理念が社長の中だけにとどまっている限り、
組織は一枚岩になれません。

理念が社員の中に息づいたとき、
会社は自ら動き、成長し続けるエネルギーを手にします。


📘次回予告

第2回:「理念を“きれいごと”と感じる社内文化」
——理念が現場に響かないのはなぜか?——